外科学(げかがく、英語: Surgery)とは?
手術によって創傷および疾患の治癒を目指す臨床医学の一分野です。外科学は外科的手法を用いる全ての分野を包括する基礎となる学問です。患者さんの診療の場では"外科"研究も行う部署では"外科学"といいます。対照的に内科学があります。学問分野は患者さんにとってはあまり関心のないことでしょうから、これより"学"は外します。
外科の歴史
西洋医学では16世紀頃、医療は薬物療法(現在の内科)が主流とされました(はっきり言って呪い以外はほかに方法がありませんでした)。理容師が戦場などでのけがの処置を行っていました(現在の外科)。その時期の名残が理容店の赤・青・白の看板(サインポール)はそれぞれ動脈・静脈・包帯を意味すると言われています。
東洋医学では14世紀には内科と外科の分化が確認されましたが、患部箇所の違い(内科は内臓、外科は表面)に基づくものでした。現在日本医療では薬物療法を主体とする科を"内科"、手術処置療法を主体とする科を"外科"と呼ぶことが多いのですが、患者さんが受診する前から治療方針を選択せざるを得ないという矛盾があります。本来"調子が悪い"患者さんはまず"診断"を受け、診断に対する治療としての手技を選択すべきです。更に薬物療法と手術療法の中間的な治療も盛んになり(内視鏡治療、画像ガイド下治療等)"内科"、"外科"の垣根もわけがわからなくなってきております。こういったことから現在では臓器別診療科を標榜する病院が増えております。(胃腸科、呼吸器科、脳神経科など)。しかしながらこれも受診前に患者さんに疾病臓器を決める事を強制するものです。本当は"どこそこが具合の悪い科"が望ましいのですが、なかなか・・・。
外科の分野
副腎などの内分泌(ホルモン)臓器の疾患を扱う分野ですが(それぞれの臓器は働きに関連が多いのですが、距離が離れています)、外科においては下垂体疾患は脳の一部であり脳神経外科学下垂体、甲状腺内分泌や呼吸器内科がなどのように臓器・機能別に専門化されていったのに対し、外科は部位に基づく観点から頭部、胸部、腹部、四肢というように身体の部位別に専門化されて行きました。例えば内科において内分泌学は主に、甲状腺疾患は首にあるので頭頚部外科、副腎疾患は腹部にあるので腹部外科というように異なった領域として取り扱われます。
分離独立した外科の分野
脳神経外科、整形外科は戦前より外科の一分野から独立しています。その他、眼科、耳鼻咽喉科、泌尿器科、皮膚科、産科・婦人科は、歴史的には外科学分野として発展してきましたが、現在では医療の専門性が高まったことにより独立した診療分野となってきています。呼吸器外科(chest surgery)
主に気管・肺などの呼吸器(respiratory)を中心として胸郭(chest)全体を扱ってきた分野です。肺腫瘍、肺癌、気胸、縦隔腫瘍等の診断、治療にあたります。当院では積極的に胸腔鏡下手術を適応し、低侵襲手術を心がけております。
食道外科(esophageal surgery)
食道癌、食道静脈瘤、食道炎、アカラジア等の診療を行います。手術に際しては可能な限り胸腔鏡下手術を取り入れ低侵襲に勤めていますし、早期癌であれば内視鏡下粘膜下層切開剥離術を行っています。また食道静脈瘤(吐血のもとになります)に対しては内視鏡下治療(硬化療法、結紮療法)を主体に行っておりますが、破裂時の緊急止血、難治例への手術、当院放射線科で行う塞栓療法と、すべての治療選択肢があり、最適の治療を選択できます。
消化管外科(gastroenterological surgery)
胃、小腸、結腸(大腸)、直腸を診療する分野です。
【診断】
経口上部消化管内視鏡検査、経鼻上部消化管内視鏡検査、下部消化管内視鏡検査を随時行っております。また、ピロリ菌診断及びその治療も適宜行います。
【内視鏡下治療】
良性腫瘍や早期胃がんは内視鏡治療と手術療法の成績が同等のものがあります。当科では効果が同等であれば可能な限り低侵襲な治療をおこないます。ESD(早期癌に対する内視鏡下粘膜下層切開剥離術)は随時行っております。経口摂取不能となった方へのPEG(内視鏡下胃瘻増設)は適宜行っております。
【鏡視下治療】
手術が必要な疾患(癌など)では可能な限り鏡視下手術(腹腔鏡手術)を適用しています。腹腔鏡下胃部分切除、胃全摘術は随時行っております。
【開腹手術】
低侵襲手術では完全切除が困難な場合は開腹手術になります。開腹するからには最大の効果を上げるため多臓器合併切除、血行再建を併用しています。
【薬物療法】
良性疾患では潰瘍の治療、ピロリ菌除菌等です。癌の場合は術前、術後の化学療法~緩和的治療まで行います。
肝胆膵脾外科
肝臓、胆管、胆嚢、膵臓、脾臓を診療する分野です。
【診断】
CT、MRI、エコーはもちろんのこと、ERCP(内視鏡下逆行性胆管膵管造影)、PTC(経皮経管胆管造影)等を行います。早期膵癌診断のためのENPD(内視鏡下経鼻膵管ドレナージ)も最近導入しました。
【Intervention治療】
ERCP、EST(内視鏡下乳頭切開結石除去)、ENBD(胆道ドレナージ)、ステント挿入、PTCD、GBD(経皮的胆管胆嚢ドレナージ)、結石除去、ステント挿入等を行っております。現在企画中ですが超音波内視鏡下の種々の処置もいずれ可能になります。
【鏡視下手術】
胆嚢摘出術は原則鏡視下手術です、また多くの場合SILS(単孔式)で行います。膵体尾部切除術、摘脾術も基本的に鏡視下です。肝炎に対するインターフェロン治療は有名ですが、血小板が少ないために治療ができない型のために腹腔鏡下摘脾術を行うことも多くあり、他医療機関よりの摘脾術のみの依頼も受け付けております。
【開腹手術】
大きな肝切除、膵頭十二指腸切除等は技術的理由で未だ低侵襲手術は行えていません。ただし、癌などの完全切除を目指すための多臓器合併切除、血行再建併用術などは、肝移植技術者の介入により積極的に行っております。
【薬物療法】
B型、C型肝炎の治療は公費申請を含め当科で行っています。劇症肝炎や肝不全に対する血液浄化療法は腎臓内科協力のもと必要に応じ行っています。悪性腫瘍に対する薬物療法は肝胆膵の癌に対する抗癌剤治療は幅広く行っております。(理不尽ながら、一部薬剤は施設制限のため使用できないものがあります)
【肝移植】
当院では肝移植はまだ行えません、しかしながら肝移植の豊富な経験を持つ医師により、肝移植施設への紹介、移植後の免疫抑制療法や経過観察は常時行っております。
腎泌尿器科
腎、尿管、膀胱、前立腺、睾丸、尿道を扱う分野です。
※通常診療は別部署です。
腎臓内科との協力により、腹膜透析カテーテル設置を腹腔鏡下に行っております。癒着による挿入困難例、再挿入、位置異常の方もこの方法により低侵襲で設置できます。
腎腫瘍に対する切除術もほとんど鏡視下にて行っております。診断、薬物療法の体制は整っていないため限定的に行っております。
腎移植は現在は行っておりません。しかしながら移植を受けた患者さんの免疫抑制治療の継続や経過観察は随時行っております。頭頚部外科
鼻咽腔、聴器、喉頭、咽頭甲状腺、副甲状腺を扱う分野です。
気管切開、甲状腺手術、副甲状腺手術等ある程度の限られた手術、処置は行っております。
胃切除後などでPEG(内視鏡下胃瘻増設)ができない患者さんに対するP-TEG(経皮的経食道的胃瘻腸瘻増設術)は適宜行っております。運動器外科
骨関節の疾患を扱う分野です。
手術療法は行っておりません。
骨粗鬆症に対する薬物療法、評価は随時行っております。
小児外科(pediatric surgery)
ある程度の疾患は診療します。小学生以上の鼠径ヘルニア、虫垂炎の治療は随時行っています。胆道閉鎖創、胆道拡張症、小児悪性腫瘍の術後観察等、小児外科医よりの依頼があれば診療しています。
内視鏡外科(endoscopic surgery)
上記各分野において、内視鏡(腹腔鏡・胸腔鏡等)を用いた治療を扱う分野です。広範囲にわたるためすべてを網羅出来ずにおります。技術的問題がなければ基本的に受診していただけます。
化学療法(chemotherapy)
主に癌に対する薬物療法を扱います。消化器系癌や乳癌に関する治療はほとんどのものが行えます。他の臓器の癌に関しては専門医よりの紹介があれば可能です。